東京・生活者ネットワーク

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東京・生活者ネットワークの基本政策(政策綱領)
東京・生活者ネットワークの東京構想

目 次

はじめに

I.2020年の将来構想

■ 将来像
市民が東京を変える
―市民自治と多世代参加による安心して暮らせる生活圏の形成―

■ 政策の目標
環境への負荷を低減し、 生活の質を高める経済へと転換を図るなかで、 有限な資源を有効に活用して、 誰もが将来の生活・環境、 医療・介護、 住まい、 子育ち・子育て・教育、 働くことに不安をもたず、 「安心して希望をもって生きることができる社会」 をめざす。

■ 政策の課題
(1) 自治分権
(2) 生活・経済
(3) 高齢社会
(4) 環境・食・農
(5) 財政

1. 政策の実現を推進するための制度
(1) 自治体の自治分権の強化、 拡大
  a. 市区町村の共通課題
  b. 23区の基礎自治体化
  c. 多摩市町村の自治と自立の確立
  d. 自治体の広域連携
  e. 東京都の行政領域を広域性、 専門性に特化
  f. 財政の分権

(2) 市民自治からの自治体の再構築
  a. 参加と討議による合意形成を重視する民主主義の展開 
  b. 市民活動・NPO活動などのネットワーキングによる地域自治
  c. ネットワーカーとしての地域政党
  d. 自治体議会改革と市民参加
  e. 自治体議会改革の課題
  f. チェック機能をもつ、 自ら運営できる議会

2. 政策の具体的目標
(1) 市民の自立と参加による生活圏の形成
  a. 「市民活動の広場」 としてのコミュニティ
  b. コミュニティ再生のための基盤整備

(2) セーフティネットの充実・創設
  a. それぞれの年代の切実な課題の解決 
  b. 非正規雇用の縮小と労働に関する条件整備
  c. 社会保障費の確保と市民によるサービス提供の充実
  d. 多様な福祉施策の市民参加による推進

(3) 環境と調和した持続可能な都市づくり
  a. 災害への対応
  b. 東京の成長管理
  c. 省エネ・省資源・省廃棄の循環型、 および低炭素社会の形成
  d. 多様な居住ニーズに対応した住まいの保障と支援

II.東京の状況と課題

  「2020年の将来構想」の「政策の課題」に関わるデータの解説

 

はじめに

 東京の政治構造を市民の手で変えよう、 市民の意思が反映される都政へと転換しよう! と2003年、 「生活者ネットワークの東京構想」を策定して5年が経過しました。 この間、 私たちが構想で求める 「多様な市民が主体となった政策形成−決定」への道筋は示されず、 「環境・福祉の基準」は二の次にされ、 石原知事のトップダウンにもとづいて進められる東京のまちづくりは、 国際競争力の強化を柱とする都心の再開発事業に基準が置かれたものとなっています。 国政に目を転じれば、 信頼に足る年金、 介護・医療制度は示されず、 原油高騰や食量危機など新たな問題もまた顕著となっています。 規制緩和による競争の激化は、 働くまち・東京にあって、 非正規雇用を大量に生み出し、 格差の拡大は若者世代にまで波及しています。
 2007年7月、 東京・生活者ネットワークは、 持続可能な社会を市民の主体的な参加によって創り出す市民社会構想の東京バージョンとして、 新たな東京構想の策定に着手しました。 めざすべき将来像を 「市民自治と多世代参加による安心して暮らせる生活圏の形成」 とし、 「環境への負荷を低減し生活の質を高める経済へと転換を図る中で、 誰もが将来の生活・環境、 医療・介護、 住まい、 子育ち・子育て・教育、 働くことに希望をもてる生活都市・東京の実現」を政策目標におく、 10年後の市民社会につなげるための構想づくりです。 「生活者ネットワークの東京構想」 は、 市民の英知を結集させて不断に更新されるべきものとの考えから、 生活者ネットワークのエリア会議での議論を皮切りに、 協同労働を推進する 「東京ワーカーズ・コレクティブ協同組合」 やケアワークの現場を市民が支える「NPO法人アビリティクラブたすけあい」 との協議を進め、 また、 多岐にわたるテーマで活動するNPOへのヒアリングを実施するなど、 おおぜいの参加で約1年をかけて議論を積み重ねてきました。
 生活者ネットワークは、 地域から生活者自らが政治に参加する「市民政治」を提案し、 広げる活動を続けてきました。今こそ将来社会を見据えた市民政策を発信し、 実現に向けていかなくてはなりません。 ここに、 「市民が東京を変える−生活者ネットワークの東京構想2009」 を提示し、 2009年都議会議員選挙を視野に入れた活動を開始します。

2008年7月
 東京・生活者ネットワーク東京構想指針検討プロジェクト 山口文江


I. 2020年の将来構想

《将来像》

市民が東京を変える
― 市民自治と多世代参加による安心して暮らせる生活圏の形成 ―

○市民自治・多世代参加・安心して暮らせる生活圏の形成
(1)市民自治
 東京構想の出発点は、 市民自治である。 地域で生活する市民が、 市民自治の観点から、 将来構想を描き、 それを実現するために自治体議会の改革を含む自治体の再構築を行ない、 新たな政策・制度を提案し、 それを実現するしくみを整備することが基本となる。
(2)多世代参加
 少子高齢社会において、 高齢層、 壮年層、 青年層、 子どもという多世代間の交流とともに、 多世代の人たちがワーク・ライフ・バランス (仕事と生活の調和) の中で、 働きやすい、 子育てしやすい、 生活しやすい環境、 しくみをつくっていくことが必要である。 そのために、 多世代の政治参加・社会参加が重要である。
(3)生活圏
 人間の生命を支えてきた多様な生態系としての自然環境を守るなかで、 生活・文化をよりよく発展させていくことが世界の都市に共通する最大の課題である。 化石燃料に依存したエネルギー消費の量で生活の豊かさを測る暮らし方から、 自然環境と調和し、 子どもたちが健やかに育ち、 共に生きる人々が安心して暮らせる生活へと豊かさの質を変えていく新たな生き方が求められている。 そのためには、 生活を支えるモノやサービス、 食料、 エネルギーなどの供給と流通を地域化して、 エネルギーと資源の消費を低減し、 効率化する必要がある。 そうした地域化の単位として歩いて行き来できる生活の範囲―生活圏の形成をめざす。

《政策の目標》

 環境への負荷を低減し、 生活の質を高める経済へと転換を図るなかで、 有限な資源を有効に活用して、 誰もが将来の生活・環境、 住まい、 子育ち・子育て・教育、 医療・介護、 働くことに不安を持たず、 「安心して希望を持って生きることができる社会」 をめざす。

(1)単なる低成長経済から、 地域経済を活性化する新しい経済への転換を行い、 自然環境を保全し生活の質を高める経済をすすめる必要がある。
(2)そこでは、 有限な資源を有効に活用する循環型社会と、 地球温暖化防止のために、 低炭素社会の実現が課題である。
(3)さらに、 「不安社会」 や 「格差社会」・「貧困」 が課題とされていることに対し、 地域において、 セーフティネットを整備するとともに、 多様性と人権を保障するために、 多様な文化の共生が重視されねばならない。
(4)「安心して希望を持って生きることができる社会」 をめざして、 「高齢社会」、 「生活・経済」、 「環境・食・農」 の分野において、 自治分権を政策実現の推進力とする観点から、 政策の課題を整理し、 政策・制度の提言を行う。

《政策の課題》

 政策の課題は、 その切り口として 「生活・経済」、 「高齢社会」、 「環境・食・農」 「財政」 の4つの分野に分け、 それを解決するための手法として 「自治分権」 をあげている。

(1)自治分権

 今後の日本経済はこれまでのような高い経済成長は望めず、 財政の逼迫が今後も進むことが予想されるが、 一方で生活の質を高めていくことが必要である。
 また、 地域分権・市民自治・市民参加は停滞しており、 自治体議会は市民自治から乖離し機能低下をおこしている。 制度面では特別区制度や都区財政調整の問題があり、 東京都から基礎自治体・生活圏への権限や財源の移譲は進んでいない。
 これらの課題を解決するためには、 「公共設計」、 「財政を含めた新たな基本設計」、 「地域特有の課題の明確化」 に対して、 自治体が政策制度の基本設計を行う能力と、 政策・制度の企画立案権を持ち、 自治分権という手法で対応していく必要がある。
 また、 自治分権と市民社会は、 「安心して希望を持って生きることができる社会」 を成立させる両輪であり、 同時に機能させることが重要である。 そのためには新しい社会的基盤、 インフラの整備が必要となる。 そのインフラとは市民による社会的事業であり、 それを機能させるための市民基金と市民銀行、 また政策提言型のNPOや、 NPO間のネットワークをサポートするNPOの存在である。

【政策の課題】
・地域分権・市民自治
・市民参加の推進
・自治体議会への市民参加、 活性化
・自治分権を進める特別区制度・都区財政調整の改革
・東京都から基礎自治体・生活圏への権限・財源の移譲の推進
・自治体における政策制度の基本設計を行う能力育成と、 政策・制度の企画立案権の獲得
・自治分権と市民社会を同時に機能させるための市民事業の基盤整備、 活性化
・新しいインフラとしての市民基金・市民銀行・政策提言型NPO・中間支援NPOの設立および制度的支援

(2)生活・経済

 2020年の東京を考える上では、 東京への経済の一極集中化が大きな問題となる。 現在は一極集中型の経済を発展させていくことで、 国際競争力を高め、 日本経済全体を引き上げるという議論が都行政において主流を占めるが、 「U.東京の状況と課題」 での分析のように、 実態は東京においてさえ経済格差が広がるばかりで、 多くの市民への所得の再分配はなされていない。 ましてや、 東京の経済発展が地方経済を底上げするという、 かつての高度成長の経済発展のパターンはもはや幻想にすぎない。
 また、 少子高齢化、 正規雇用と非正規雇用の所得格差の増大、 東京都心部への昼間人口集中・産業集積による問題、 そして少子化による生産年齢人口の減少なども、 大きな課題である。 それらによって地域では、 福祉・人権保障などのセーフティネットの低下、 生活・住環境水準の悪化、 子育ち・子育て、 教育環境の格差拡大などが懸念される。
 このような多くの課題に対応していくためには、 経済や生活の一極集中から、 地域特有の課題を明確にした上で、 それに対応できる都市型のコンパクトシティ化 (2〜3万人のコミュニティ単位を生活圏と規定する) や地域内雇用が可能な市民事業による、 コミュニティの再生が必要であり、 一方で東京の成長管理を行うことが必要である。

【政策の課題】
・グローバルな経済発展のもとでの所得・資産格差の拡大是正
・東京都心部への昼間人口集中・産業集積の分散化
・少子化、 生産年齢人口の減少への対応
・地域の福祉・セーフティネットを確立
・虐待・DV(ドメスティックバイオレンス)・引きこもりなど、
 さまざまな人権問題への対応
・経済的原因による子育ち・子育て、 教育環境の格差是正
・高齢者をはじめとする住まいへの不安の広がりの是正
・地域の生活・住環境水準の是正

(3)高齢社会

 高齢社会は、 今後の日本社会における最も大きな問題の一つである。 今後、 高齢化はさらに加速し、 家族形態の変化を伴って、 高齢者の単身世帯の増大、 とりわけ、 いわゆる“おひとりさまの老後”と呼ばれる女性の高齢単身世帯が著しく増大する。 また、 女性の高齢単身世帯は、 低所得化する可能性が高い。 このことは将来の高齢者の介護・医療費の増大や、 住宅費負担の課題が大きくなることであり、 新たな貧困問題の可能性を示している。
 一方で現在の日本の福祉サービスは急激な高齢化の中で崩壊の危機に瀕し、 来るべき高齢社会では機能しない可能性が高い。 現在の社会的インフラでは将来の課題に対応できない以上、 新たに有効に機能するインフラをつくっていく必要がある。 そのためには現在の行政サービスとコミュニティの役割を自治分権の方向に変化させ、 コミュニティにおける市民事業を展開させることが必要である。 また、 こうした福祉を媒介としたコミュニティは、 市民による社会的事業との親和性が高いと考えられる。
 そのような市民事業を考える際には、 現在の福祉事業に関わる人件費の圧倒的な安さをどうするのか、 地域内での社会的事業のあり方をどう考えるのか、 高齢者を地域の中で自分たちの問題としてどう捉えるのか、 多世代参加をどのように働かせていくのか、 その上で外国人ヘルパーの導入をどうとらえるのか、 などの問題を一つ一つ解決していかなければならない。

【政策の課題】
・加速する高齢化と高齢単身世帯への対応
・女性高齢単身者の増大と低所得化への対応
・介護・医療の負担増大の改善
・高齢者の住居費負担への対応
・福祉サービスの機能不全の是正
・福祉に関わる事業の人件費の安さと人材の不足の是正
・福祉コミュニティの形成と市民事業の可能性の追求

(4)環境・食・農

 環境問題はすでに世界的な課題であり、 しかも緊急な対応が迫られている最も重要な問題である。 東京を低炭素社会として、 新たな都市像を再構築することは、 世界の都市間競争へのインフラ整備、 あるいは東京オリンピック誘致よりも優先されるべき課題である。 東京都のCO2排出量は1990年比で6%増え、 都市問題としてのヒートアイランド現象も高まっている。 また、 ごみの排出量も都心部などの人口増加によりそれまでの減少傾向から増える傾向にある。 それに対して、 省エネ・省資源・省廃棄などの対策はディーゼル車対策、 事業部門のCO2排出量削減の義務化など先進的な取り組みも見られるが、 環境対策が3環状線整備による渋滞解消に重点化され、 自動車交通の抑制、 廃棄物の発生抑制、 環境や景観への影響が大きい超高層マンション・ビルの規制などでは後退するなど、 環境対策を都市政策とからめて総合的に進めるという視点は弱い。
  環境への負荷を今後30年かけて半減することを目標に、 東京という都市の生活・経済を支える社会的基盤・構造を改良するためには、 都市の成長管理の手法を導入して環境対策をまちづくりに組み合わせて総合的に取り組む必要がある。 その基本となるのは、 生活を支えるモノやサービス、 食料、 エネルギーなどの供給と流通を地域化して、 エネルギーと資源の消費を低減し、 効率化するコンパクトなまちづくりである。 そうした地域化の単位として、 歩いて行き来できる生活の範囲―生活圏の充実によるコンパクトな都市づくりをめざす。
  温暖化などの環境問題とともに、 原油などエネルギー資源の高騰に関連して世界的な課題として注目されている食と農の問題についても、 日本全体の1割の人口で食糧消費の3割を占め、 食料の7割を海外に依存している東京が避けて通れない問題である。 東京の農地は東京全体で4.9%、 全国では0.2%であり、 食糧の自給率は1% (自給のほとんどが農産物) にすぎない。 東京の農業を省エネ効果も合わせて、 地産地消型で維持し、 都市のコンパクト化にからめて拡大していくとともに、 東京近県の農業との連携により東京圏として地産地消を広げることが必要である。 また、 市民農園を含めた都市近郊農地の維持拡大は環境保全のみならず防災の面からも重要である。

【政策の課題】
・低炭素社会の構築
・CO2排出量の増大とヒートアイランド現象の激化への是正
・エネルギー資源の高騰に関連した食料価格の上昇の是正
・省エネ・省資源・省廃棄の推進
・減少する地域の緑・生産緑地の維持、 拡大
・分断される水と緑のネットワークの拡大
・停滞する地産地消を生かした農業の推進
・増大する東京近県の耕作放棄地の活用

(5)財政

 東京は、 全国一税収が多い。 同時に、 都市のインフラ更新や災害対策、 環境対策、 貧困・格差対策、 食の安全対策など大都市特有の政策課題、 これから本格化する高齢社会対策や教育問題への対応などへの財政需要も極めて大きい。 特別区の基礎自治体化、 市町村を含む合併や地域自治の推進の課題にも、 十分な財政が確保できるようにすることも大事である。
 こうした課題に直面する一方で、 地域間の税収格差が大きな問題になり、 格差が法人二税(※1)によってもたらされているとの認識、 地方税収の偏在の是正、税収の安定の議論の中で、 2008年度に地方法人特別税、地方法人特別譲与税が導入された。 地方分権・地方の財政自立のあり方についての議論を回避したまま、 消費税の引き上げを憶測させる暫定的な措置である。
 地方間格差の是正方法には地方交付税制度があり、 これにより格差は減少するものではあるが、 財源問題もあってこの格差がなくなるとも考えられない。 また、 東京への人口の流入・集中は今後10年ほど続くと見られている。 これ以上の東京への人口集中は環境を悪化させ、 社会資本などの不効率や災害リスクも増大すると思われる。 東京と地方が対立するのではなく、 地方分散を視野にして東京への集中を抑える均衡化の方策も必要であろう。 それには核となる地域の育成や生活基盤整備などの促進が必要となる。 人口分布は地域間の生活水準に関わる比重が大きく、 生活基盤整備型でよりよい生活環境づくりのできる一般財源の充実のための合理的な財源配分が求められるであろう。 今後、 地方税、 地方交付税の財源、 消費税、 エコロジー的税制改革(※2)など、 広範で根本的な議論が控えており、 大都市の地方税の地方移転もその対象となることが避けられないであろう。
 東京は、 必要な財源を確保して行政責任を果たしながら、 不効率な外郭団体を整理するなど効率的な運営が一層重要となっている。 一方、 環境を重視した都市政策の展開が必須であることや福祉や教育施策の展開など、 東京のあり方と財政基盤の確保を含めドイツなどで進めているエコロジー的税制改革が、 政策と税制・財源に関する重要な内容をもつ課題となってきた。
 地方税、 地方交付税の財源、 消費税、 エコロジー的税制改革など、 広範で根本的な議論が控えており、 地方交付税制度と地方法人特別税、 地方法人特別譲与税の制度間の整合を図りながら、 水平的調整制度など地方の自治・分権を進める立場から、 税制、 財源と配分のしくみの制度設計に積極的に関わる必要がある。 財政基盤の確保と安定化に早急に取り組まなければならない。

【政策の課題】
・行政責任を果たすため不効率な外郭団体の整理など効率的な行財政 運営
・特別区の基礎自治体化にふさわしい財政制度の構築
・都内自治体の財政自立の確保
・財源のつけ替えや水平調整のしくみづくりなど、 地方財政全体の地域間調整の推進
・環境を重視したエコロジー税制の導入

※1 法人二税関連について
 2009年度以降の消費税を含む抜本改革の予定に先駆ける暫定措置として、 都市部に集中する地方法人二税のうち、 法人事業税の半分、 2兆6000億円を国税化(地方法人特別税)し、 これを人口と従業員を基準に都道府県に配分する(地方法人特別譲与税)こととなった。 消費税1%に相当するとされ、 東京都は、 3268億円の減収となる。
 財源格差の実態は、 総額と一人当たりで見ることができる。 地方税の総額 (都道府県税と市町村税の合計) で見ると、 最大は東京都の5.9兆円で、 鳥取県は1189億円である。 第2位の大阪府2.55兆円、 第3位神奈川県2.52兆円、 第4位愛知県2.38兆円でそれほど差はなく、 東京都が群をぬいている。 それは法人二税によってもたらされている。
 一人当たり額では、 最大は東京都の48.1万円、 最小は沖縄県の15.3万円。 第2位は愛知県で33.5万円、 第3位は大阪府で29.5万円、 第4位は神奈川県で29万円となっており、 一人当たりでの格差は小さくなる。 東京都と他の自治体との差は法人二税によるものである。

※2 エコロジー的税制改革
 地球温暖化防止のために、 2050年までに、 温室効果ガスを半減することが課題となっている。 このような低炭素社会の実現のための政策手段として、 「環境税・炭素税」 の導入が重要な課題である。 この場合、 エコロジーの観点からの税制改革の提案も必要である。 すでに、 「エコロジー的税制改革」 の提案が行われ、 実施されている国 (例えば、 ドイツ) もある。
 この税制改革の内容としては、 次のような案が考えられる。 (1)環境消費 (例えば、 鉱物資源など) ないし環境負荷に対して課税を行い、 環境費用の内部化をする。 (2)従来の税制を長期的に、 段階的に、 労働や所得に対する税制から、 環境負荷に対する税を中心とする税制へと転換をする。 増税と減税を一体で実施し、 税収中立を基本とする。 (3)環境税は目的税にしないが、 環境関連の税制の導入による税収に見合う額について、 年金などの社会保険料 (社会保険税) の引き下げを行う。 社会保険料の引き下げは、 個人負担の調整と、 企業に対する負担調整になり、 これは雇用創出につながる。 このようなエコロジーの観点からの税制構造全体の見直しの議論が課題となろう。


1.政策の実現を推進するための制度

(1)自治体の自治分権の強化、拡大

 東京都制は、 1943(昭和18)年の戦時体制として、 それまでの東京市を廃止して成立したものである。 基礎自治体として位置づけられなかった23特別区の自立・自治権拡充は区民の長年の悲願であり、 2000(平成12)年の都区制度改革により大きな進展を見せた。 今後も改革を進め、 基礎自治体にしていかなければならない。
 23区の改革と多摩市町村の自治と自立の確立には共通する課題があるとともに、 23区と多摩市町村の現状からそれぞれ特有の課題がある。

a. 市区町村の共通課題
 基礎自治体である市町村と基礎自治体をめざす区部では、 当面解決すべき課題に著しい違いがある一方で、 自治分権の強化・拡大の立場から基本的な考え方において共通する課題がある。
ア. 財政自主権の拡大、 補助金でなく財源の国・都からの移譲
イ. 教育、 環境、 まちづくり・都市計画など事務権限の拡大、 国・都からの移譲  
ウ. 地域自治、 市民自治の推進、 コミュニティ政策の強化

b. 23区の基礎自治体化
 23区は、 区民に身近でありながら、 都制度の中にあって大都市事務を都が所管し、 財政制度的にも都区合算、 財政調整を都が行っているなど、 基礎自治体とは言いがたい実態がある。 名実ともに基礎自治体への改革が求められている。
ア.地域の実情に合わせたきめ細かな対応により、 真に住民が豊かさと潤いを実感できる社会を構築し維持するため、 区の基礎自治体としての行財政体制を強化する。
イ.東京大都市地域における基礎自治体の役割をさらに明確化し、 都が留保している事務のすべてを区が担うようにする。 広域処理が望ましい事務は、 区の連合方式での処理を進める。

c. 多摩市町村の自治と自立の確立
 多摩市町村は多様性をもつ基礎自治体である。 それぞれの特性を活かした自治と自立が求められ、 財政の確立と事務権限の充実が求められる。
ア. 多摩市町村の特性が生かされるよう財政と事務の権限を拡充する。
イ. 財政力の弱い自治体への財政保障のしくみをつくる。

d. 自治体の広域連携
 各市の自治と自立の中で、 広域的で合理的な取り組みで効果が期待できるものや、 自治体運営上協力・連携することで効率向上が図れるものがある。 多様な手法を駆使する必要がある。
ア. 市間の連合方式を視野に地産地消、 食の安全確保、 ごみの減量、 都市農業や里山の多様な機能を生かす、 などの立場からコンパクトな循環型都市づくりを進める。
 ・CO2の削減は排出権取引ではなく、 地域で排出を減らす。
 ・ごみの減量により最終処分場の延命を図る。
イ. 多摩川流域水系と地下水系の環境改善・維持策が展開できるように、 自治体連合を模索する。
ウ. 自治体間の人事交流や人材活用など人事の広域的しくみを整備し、 自治体組織の活性化と調査・研究機能を強化する。

e. 東京都の行政領域を広域性、専門性に特化
 23区の基礎自治体化と多摩市町村の自治と自立により、 東京都は、 基礎自治体の事務を移譲して、 広域性、 専門性などに関する行政領域に特化し、 基礎自治体を支援する。

f. 財政の分権
 区の基礎自治体としての行財政体制を強化するため、 都区合算の方式から、 都区分離・各区算定の方式に向けて事務的な整理を進める。
ア. 東京都の財政
 都の起債依存度は低下傾向にあるが、 2005(平成17)年度末の起債残高は6兆7000億円、 一般会計税収比で1.6倍である。 無駄な支出を抑え、 高齢化の進展への対応などを考慮し、 より健全な財政運営をめざす。  
イ. 基礎自治体23区としての財政
 国と地方の財政配分を念頭に一般市町村並の制度への転換をめざす。
ウ. 多摩市町村の財政自立を高める
 自治・分権にふさわしい財源に拡充するため国・都からの財源移譲を進める。
 財政力に著しい差があり、 高齢化などに対応できる税財政のしくみに改革する。
 多摩市など、 急激に高齢化が進む自治体の行財政運営の改革努力を前提に、 なお不足する財源が確保できるしくみをつくる。

(2)市民自治からの自治体の再構築

 近年、 参加と討議による合意形成を重視する新たな民主主義の展開が注目されている。 地域の問題解決には政府のみならず、 市民活動団体、 企業、 生協や農協、 労働組合、 個人など多様な主体がかかわることが必要であり、 このような多様な主体による問題解決のための機会を創出することを、 「参加ガバナンス」 と呼んでいる。 この新たな民主主義の実現のために、 市民自治を起点にして、 自治体の再構築を行うときである。

a. 参加と討議による合意形成を重視する民主主義の展開
 市民自治の出発点は、 市民一人ひとりが、 地域における問題発見とその政策化を行うことにある。 その参加のプロセスは、 市民間における合意形成のためのコミュニケーション、 市民と自治体政府・自治体議会との間のコミュニケーションを保証するものである。 このコミュニケーションは自由な公開された討議であり、 対論であることが必要である。
 また、 市民参加の基礎は、 地域における自発的で批判的な市民活動が活発になることである。 市民活動と自治体の関係は、 協力ばかりでなく、 政策をめぐって常に批判・緊張関係が生じる。 他方、 担い手の側においても、 たとえば自治会・町内会とNPOの間にも緊張関係が存在する。 そうした緊張関係があるからこそ地域の人々に開かれたコミュニケーションが必要とされ、 それに基づいて合意形成が図られていくことが、 地域における民主主義の展開にとって重要となる。
ア. 市民参加の前提は、 情報公開である。 政策の具体的な目標や政策評価の基準になる政策指標の開発を進める必要がある。
イ. 市民と自治体政府・自治体議会との間の市民ルール、 自治体基本条例・自治体議会基本条例を制定する。 とりわけ、 後に述べるように、 自治体議会への参加のしくみをつくることが課題である。
ウ. 参加の問題点として、 誰が参加するのかという参加者の範囲の問題がある。 参加が、 特定のグループや階層に限定されないように、 多様な当事者のエンパワメント (力を高める) が必要である。

b. 市民活動・NPO活動などのネットワーキングによる地域自治
 市民自治からの自治体の再構築のためには、 地域自治が基盤になる。 多様な市民活動の展開は、 地域における市民ニーズの掘り起こしの役割をはたしている。 地域自治の担い手は、 このような多様な市民活動・NPO活動のネットワーキングによって形成される。
 従って、 市民活動による政策づくりのためのネットワークづくりが、 地域自治の基盤をつくる。 そのために、 次のような段階に応じたネットワーク形成が必要となる。
ア. 地域におけるテーマ別政策課題別市民活動ネットワーク
イ. 政策課題別ネットワークを基盤にした地域における総合的市民活動ネットワーク
ウ. 地域における単位ネットワークをネットワーク化する 「複合的ネットワーク」

c. ネットワーカーとしての地域政党
 このような市民活動のネットワーキングの形成において、 地域政党 (ローカル・パーティ) が果たす役割が重要である。 地域政党は、 地域における政策づくりの要に位置している。 地域政党は、 市民活動のネットワーキングを形成するための 「ネットワーカー」 の役割を果たすことで、 地域における民主主義を推進する。 そのモデルケースとして、 東京・生活者ネットワーク(東京ネット)の活動がある。 東京ネットの政策づくりの主体は、 地域の多くの市民である。 東京ネットはそうした市民の声を集め、 生活現場に密着した視点で政策課題を抽出し、 市民の手で地域の実情を調査し、 具体的な解決策をつくっていく作業を進めている。
ア. 地域政党は、 自治体毎に個性ある地域ビジョンを構想し、 それに基づいた具体的な政策を提案していくことが重要である。 議会改革が進展し、 議会が 「討議の広場」 になり、 政策をめぐる議論が活発になることによって、 地域政党の役割を大きくしていく。
イ. 国政レベルは、 全国政党間の連立による 「政権交代のある民主主義」 の展開が求められている。 他方、 自治体レベルにおける議会は、 全国政党と多様な地域政党によって、 地域ビジョンや政策づくりをめぐって活発な議論が行われる 「討議の広場」 に改革する。

d. 自治体議会改革と市民参加
 自治体の長と議会が直接選挙で選ばれるという二元代表制のもとで、 議会は 「討議の広場」 であり、 「長の監視・チェック機関」、 「立法機関」 である。 しかし、 自治体議会については、 これまで費用弁償の廃止や政務調査費報告書への領収書の添付など、 議会活動への市民によるチェックが行われている。 他方、 議会側の動きとして、 本会議のケーブルテレビによる放映・動画記録の公開、 など議会活動の一部の公開、 議員定数の削減などに限定されてきた印象がある。 総じて、 議会のコスト問題に焦点が当たっている。 さらに、 財政破綻した自治体の事例など、 議会が長のチェック機関として機能していないなどをはじめとして、 「議会不要論」 もある。 これに対して、 政治参加の基本である選挙によって選ばれた代表機関として自治体議会が改革を行い、 存在感を示さねばならない。
 自治体の再構築のために、 現在、 自治体議会の改革が始動している。 第28次地方制度調査会答申を受けて、 2006年に地方自治法が改正された。 これにより、 自治体議会に関して、 (1)議長への臨時会の招集請求権の付与、 (2)議員の複数委員会への所属制限の廃止、 委員会による議案提出権の創出、 (3)会の審議に必要な時に長および行政委員会の委員長などの議場への出席義務の明確化などが行われた。 最後の 「必要な時」 とあるのは、 必要でない時には出席しなくともよいことを意味している。 (4)さらに、 自治体の長による 「専決処分」 に関して、 「議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を召集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき」 とその要件が規定された。 こうした改正の趣旨を踏まえた改革の推進が必要である。
ア.従来 「要件の明確化」 がなかったため、 実際の運用に関してなし崩し的に専決処分が運用されるケースがあったが、 長が自治体議会の議決を得ずに行う 「専決処分」 は限定する。
イ.自治体議会への必要のない縛りを撤廃し、 議会運営の自由度を拡大し、 議会が、 自由な発想で議会運営の新たな展開を試みるなかで、 自治体議会が、 「政策制度の企画立案権」 を行使する体制をつくる。
ウ.自治体議会改革フォーラムによって提起されているように、 議会改革の目標として、 「議員同士が責任をもって自由に討議する議会」、 「市民も参加できる開かれた議会」、 「積極的に情報を公開し透明性のある議会」 があげられている。 すでに、 今の制度でも実現できる議会改革を推進する。

e. 自治体議会改革の課題 (現状での改革)
 「議員同士が責任をもって自由に討議する議会」、 「市民も参加できる開かれた議会」、 「積極的に情報を公開し透明性のある議会」 に関して、 今の制度でも実現できる議会改革を示す。
ア. 積極的に情報を公開し透明性のある議会
  議会の動画記録をインターネットで公開、 夜間議会・休日議会の開催、 地域における議会報告会の開催、 議会での政策情報の集約などがあげられる。
イ. 議員同士が自由に討議できる議会
  本会議で一問一答方式を導入、 事前通告なしの質問、 議会による議決事項の拡大、 市長などの 「反問権」 を認めるなどがあげられる。
ウ. 市民が参加する議会
  陳情・請願の際の議会における説明機会の保証、 公聴会の開催や参考人の招聘の活用、 「議員が市民と自由に意見を交換する一般会議」 の設置、 公募市民による審議会・市民会議の設置があげられる。
エ. 市民からの「政策提案制度」がある議会
  今後、 自治体議会において、 議会主導で市民参加方式により、 議会基本条例・自治体基本条例の制定というプロセスが考えられる。 さらに、 議会が予算・決算について十分な審議を行い、 予算の修正を行い、 チェック機能を果たすと同時に、 「市民参加による市民予算づくり」 が課題である。 こうした議会における政策・予算づくりを行うために、 議会に市民からの 「政策提案制度」 のしくみをつくることが課題となる。

f. チェック機能をもつ、 自ら運営できる議会
 中期的課題として、 地方自治法を変えるなど法整備を行って、 議会改革を行う課題がある。 ここでは、 議会が 「実効性あるチェック機能をもつ議会」 としての体制を整備し、 「自立した代表機関として自ら運営できる議会」 となることが課題になる。
ア. 実効性あるチェック機能をもつ議会
  議会が市民からの苦情に応えて調査し解決を図る 「不服申し立て機関」 の設置、 日常的に 「行政活動の評価を行う機関」 の設置により、 議会の監視機能を整備する。
イ. 自立した代表機関として自ら運営できる議会
  議長が 「定例会、 臨時会の招集権」 をもつ体制を確立し、 「議会予算の編成と執行」 を議会自らが行える制度を実現する。
ウ. 行政から独立した事務局をもつ議会
  自治体議会が 「政策制度の企画立案権」 を行使する体制を実現するためには、 議会のサポート機能の強化が必要である。 つまり、 議会事務局が行政機構から独立し、 議会事務局職員として雇用し、 事務局機能を充実・強化することが重要である。 この場合、 必要に応じて、 自治体議会の連合体として議会職員を雇用するしくみも考えられる。

2.政策の具体的目標

*ここで挙げている具体的政策は、 政策の目標を実現するために考えた例示であって、 この構想をもとに具体的政策を考えるときの参考である。

(1)市民の自立と参加による生活圏の形成

 低炭素社会への転換、 セーフティネットを整備する地域社会の単位として想定する生活圏は、 そうした政策を推進する基礎となる自治分権の単位でもある。 生活圏は市民の参加と自治によって本来の機能を発揮する。 市民自らが地域社会において、 これまでとは違う生活の質の豊かさについて考え、 市民相互のコミュニケーションを図り、 地域の多様な世代の参加と資源を活用することによって、 生活圏は持続性のあるコミュニティとして形成される。

a. 「市民活動の広場」としてのコミュニティ
 1971年の自治省 (当時) による 「モデル・コミュニティ政策」 の展開を始まりとして、 近年では、 新たに防災体制の構築において自治会・町内会を強化してコミュニティの再生を行なうという議論がなされている。 しかし、 先のモデル・コミュニティ政策において、 地域に 「コミュニティ・センター」 など施設は建設されたが、 コミュニティの再生に挫折したという経緯がある。
 コミュニティ再生において自治会・町内会が注目されているが、 地域において相違するとはいえ、 多くの場合その担い手の高齢化、 年数回の交流 (運動会やまつりなど) や防災訓練などに活動が限定されている。 従って、 コミュニティの再生のためには、 地域で活動する多様な市民組織や個人が自由に出入りできる 「広場」 (公共空間) を創出することが肝要である。
ア. コミュニティ (地域社会) は特定の組織を意味するのではなく、 市民活動の 「広場」、 「市民活動が行われる空間」 と考えることが重要になる。 「コミュニティ(広場)」は、 地域の課題を解決する場である。
イ. 地域において活動する市民活動団体・NPOが、 政策課題別 (子育て、 環境など) にネットワーク化し、 自治体毎に政策課題別ネットワークの連合体を形成することが重要である。 近接している自治体間では、 ネットワークは重層的に形成される。 地域政党は、 ネットワーカーの役割を果たす。 このような市民活動の複合的ネットワークの充実により、 市民の自立と参加による生活圏を形成する。

b. コミュニティ再生のための基盤整備
 コミュニティ再生のための基盤整備として、 次の目標を示す。
ア. 地域における単位ネットワークの連携を図り複合的ネットワークを形成する。
イ. 市民社会・地域社会を強化する市民資金の循環を確立するために、 市民基金、 市民財団、 市民銀行 (NPOバンク) の設立を進める。
ウ. 市民活動促進・交流相談・支援センターの設立と拡充を図る。
エ. 地域における社会資源の開放と活用をすすめ、 とくに学校などの空き教室・施設の開放と活用を促進する。
オ. 自治体議会のもとに地区議会を設置する。
 地区議会は、 自治体議会の付属機関として位置づけ、 地区におけるまちづくりを審議する機関とする。 おおよそ中学校区単位 (人口2〜3万人程度)、 出張所単位で設置する。 地区議会の構成については、 選挙を実施するか、 自治体議会の構成に応じて、 各会派による推薦により地区議会を構成するなどの方法が考えられる。

(2)セーフティネットの充実・創設

 希望ある社会とは、 高齢者、 若者、 年少者、 そして壮年層というそれぞれの年代が希望をもって生活している社会であり、 障がい者、 高齢者が自立した生活を営める社会である。
 そのためには、 地域に密着した市民活動が活発に営まれており、 行政も市民の統制のもとに公共の役割を果たしていることが必要となる。 各市区町村の自治確立を前提として、 それぞれの自治体でセーフティネットを充実・創設する。
 現状は、 国家財政の危機から、 生活保障システムが切り崩され、 同時に、 市場主義による改革が断行されたことから、 極端な競争主義が社会に蔓延している。 行政は、 強きものを助け、 弱きものを排除する傾向にあり、 社会的な排除が進められている。 労働現場では非正規雇用が拡大し、 社会的 「格差」 が広がっており、 特に若者世代の貧困が社会の重大な課題となっている。

a. それぞれの年代の切実な課題の解決
 この間の社会保障費の削減により、 年金、 介護保険、 医療のすべてが、 深刻な課題を抱えている。 少子高齢化の進展により社会保障費の増加は避けられない。 充分な予算を確保するとともに、 できる限り市区町村が決定権をもつ制度に改める必要がある。
ア. 高齢者:介護の社会化が実現していないなか、 特に在宅介護の危機に対応する。
イ. 若者:働く場所を確保し、 ホームレスやネットカフェ難民を支援する。 また、 非正規雇用の正規化を進める必要がある。
ウ. 年少者:子どもの権利保障を進め、 成人してから自立して暮らせるよう市区町村主体の教育を徹底する必要がある。
エ. 市区町村を行政運営の主体とし、 それぞれの地域においてセーフティネットを用意し、 誰でも受け入れ可能な柔軟な社会を形成する。

b. 非正規雇用の縮小と労働に関する条件整備
 パート労働や派遣労働などの非正規雇用の増加が、 結果的に社会保障費の増大を招くことになりかねない。 非正規雇用への社会保険適用など条件整備を図るとともに、 派遣労働の職種限定など非正規雇用の縮小を進める。 具体的には以下のような施策が考えられる。
ア. パート労働法の上乗せ規制、 一定規模以上の企業における派遣労働を禁止する。
イ. 若者にも、 ホームレスやネットカフェ難民が広がっており、 貧困状況からの脱出のための支援施策を進める。
ウ. 労働には、 教育が重要。 高校中退者やひきこもり、 失業者に対する無料のリカレント教育、 仕事の提供を行う。
エ. 地域に労働の場を用意するために社会的企業を支援する。
オ. 仕事と生活を両立 (ワーク・ライフ・バランス) できるよう、 介護休暇、 育児休暇などを男女ともに取得しやすくするための支援施策を充実する。
カ. 「同一労働・同一賃金」 の考え方に立った正規・非正規、 男女の賃金格差を解消する。
キ. 外国人労働者の受入れ拡大については、 その前提として、 外国人労働者の権利を保障し、 安価な労働力導入にならないよう条件を整える。

c. 社会保障費の確保と市民によるサービス提供の充実
 社会保障費については、 高齢社会の進展のため、 国でも自治体でもこれまで以上の財政投入を必要としている。 行政運営上の無駄を省くことを前提としつつ、 増税を税源のバランスに配慮して行う必要がある。
ア. 累進課税を強化して所得再分配を進めるとともに、 成長管理の観点から企業課税の強化を検討する。 さらに、 福祉サービス全体の強化を図り、 市民によるサービス提供を促進する必要がある。
イ. 消費税の増税については、 増税分は地方税でかつ、 社会保障費に充てることを前提とする。
ウ. 社会保障分野において、 市民もサービス提供の主体となる。 現在の行政サービスの一定割合を市民活動により提供することにする。 この際、 安上がり行政にはさせないよう、 従前の自治体予算分を市民活動に交付することも考えられる。

d. 多様な福祉施策の市民参加による推進
 自治分権の社会を実現するためには、 それぞれの地域においてセーフティネットをつくることが必要となる。 市民参加を基本としつつ、 自治体施策を充実させ、 場合よっては、 東京都や国の施策の変更や支援を求めることが必要となる。
ア. 生活保護は、 所得再分配機能として、 国の費用支出を維持する。 しかし、保護決定は自治体責任として、住民代表が参加する必要がある。
イ. 介護保険制度は、 2006年に行われた改正内容を見直し、 生活援助の充実を軸として制度に組み入れる必要がある。 介護報酬を引き上げ、 介護労働者の賃金・労働条件の改善を図るべきであろう。 また、 市民が制度運用に直接関与できるよう基礎自治体に市民が参加する 「介護保険運営委員会 (仮称)」 の設置を進めるべきである。
ウ. 自立支援法は見直す。 障がい者が地域で働き、 生活できる場を用意すべきである。 障がい者の生活が保障されたのち、 将来的には収容型施設を廃止していく。 障がい者への差別のない社会をめざすことが必要である。
エ. 子育て世代を孤立させない。 子育ての悩み、 仲間づくりを積極的に支援する。 子どもの権利を保障するための各自治体における条例制定が必要である。
オ. 救急医療体制を確立するため、 医師の確保、 育成を図る。 将来にむけて在宅支援体制を確立するため、 福祉と医療を統合し、 ターミナル・ケアを含めて対応するよう、 できることから対策を進める。

(3)環境と調和した持続可能な都市づくり

 全国的に人口減少が早まっていくなかで、 東京は都心部を中心にした社会的な人口流入により2020年頃まで人口が増え、 その後、 徐々に人口減少が始まり、 高齢化と生産人口世代の減少が加速化する。 多摩地域の人口減少は区部よりも早く始まる。 また、 直下型地震や海洋型の巨大地震も確実に起こるとされる。 2020年における人口1300万人の巨大都市の重要な課題は、 高齢社会への対応、 環境・エネルギーにおける低炭素社会の構築、 災害に強いまちづくりとなる。 具体的には、 生活圏を基礎とした、 市民が主体となった自立分散型の都市構造としてのコンパクトシティの形成である。
 コンパクトシティは、 中学校区程度の歩いて暮らせる生活圏を単位に、 鉄道など公共交通の拠点を中心にして、 商業施設、 公共施設、 医療・介護施設、 教育施設、 集合住宅など都市に必要な機能が効率的に配置され、 その周囲に緑地、 農地などの防災を兼ねたオープンスペースを整備した都市である。 清掃、 消防、 上下水道などは広域連携で整備される。
 コンパクトシティは、 そこに生活する人々が、 生活の豊かさの質を自ら考え、 自らの意志と行動により、 地域の多様な資源を活用することによって実現されるものであり、 高齢者、 子育て世代、 若者、 子どもなど多世代がまちづくりに参加、 交流しながら誰もが希望すれば住み続けられる持続性のあるコミュニティを形成する。

a. 災害への対応
 大地震を想定した東京の災害対策は、 地域に暮らす人々の 「いのちと生活を守る」 ことを基本とし、 地域と市民が主体となって、 地域の実情に合わせた災害対策にしていく必要がある。
ア. 生活圏における防災ネットワークの構築と市民を主体にした地域防災力の強化を図り、 自治体の役割と支援を明確にする。
イ. 耐震基準に達しない住宅の耐震化を整備するとともに、 防災力を強化する観点からの地域のまちづくりルールを市民主体で策定する。
ウ. 木造住宅密集地域の防災まちづくりを推進する。

b. 東京の成長管理
 人口増加とこれ以上の都心区部への一極集中を前提としない効率的な省エネをすすめる都市整備、 多摩地域への都心機能の分散・拠点化(多心型)と東京の環境問題の大きな原因となっている自動車交通を抑制し、 公共交通と自転車交通を組み合わせた歩けるまちづくりとしてのコンパクトシティ、 市街化開発の抑制と緑地・農地の保全など成長管理による土地利用と整合性のとれた都市づくりを進める。
ア. 生活圏連携の自立した都市と多心型都市構造の誘導
 (1)生活圏を単位とし地域毎に自立した都市の連携を推進する。
 (2)公共交通の拠点を中心としたコンパクトな土地利用への再編を図る。
 (3)多摩を中心に職住近接の広域拠点を形成する。
イ. 自動車交通を抑制し、 公共交通・徒歩・自転車を組み合わせた交通ネットワークの構築
 (1)地域の状況に対応した鉄道、 バス、 コミュニティバス、 路面電車 (LRT) などを組み合わせた交通体系の整備を促進し、 自動車利用の抑制を図る。
 (2)歩行者、 自転車が安心して快適に移動できる交通空間の整備を促進する。
 (3)交通機関相互のアクセスの円滑化を図る。

c. 省エネ・省資源・省廃棄の循環型、 および低炭素社会の形成
 化石燃料などエネルギー資源の消費を抑制し、 環境への負荷を極力低減するために、 資源を循環的に有効利用し、 廃棄物の発生を削減する低炭素社会システムの形成を、 都市政策と環境政策の統合により推進する。
ア. 水・緑・大気など自然環境の保全と回復
 (1)緑地、 農地を削減する市街地開発を抑制し、 森−里山−公園−農地−緑道などをつなげた緑のネットワークを形成する。
 (2)地産地消を生かした都市近郊農業および市民農園など農地の確保を支援する。
 (3)河川─臨海部を軸とした水と緑の環境の保全と回復を図る。
 (4)ヒートアイランド現象を防ぐ風の道などに配慮したまちづくりを進める。
 (5)高層建築物などの環境への影響を明らかにするために環境影響評価条例の対象を拡大するとともに、 再開発など高層化、 集合化によって生まれた空地の緑化を義務づける。
イ. エコ・循環型地域社会の構築
 (1)エネルギー循環、 水循環などのシステムを整備する。
 (2)都市施設や住宅の建設、 更新について環境に配慮した手法を整備する。
 (3)太陽光発電、 バイオマスなど自然エネルギーの利用を促進する。
 (4)市民、 事業者が取り組みやすく、 効果的なカーボンオフセットなどのCO2排出削減の政策を推進する。
 (5)環境を重視したエコロジー的税制への改革を図る。
 (6)低炭素社会への構造転換を図る。

d. 多様な居住ニーズに対応した住まいの保障と支援
 超高齢社会とともに、 格差社会が広がるなかで、 高齢者を中心にこれからの住まい・暮らしに不安をもつ人が増える一方で、 住まいに対する人々のニーズも変化し多様になっている。 誰もが希望すればその地域で安心して住み続け、 暮らしていけるためには、 地域社会のなかで、 自らの生をまっとうして住み、 暮らすこと―居住することを保障する居住権を基礎にした、 多様なニーズに応じた住まいを地域で保障して、 共に暮らし支えあうコミュニティをつくることが重要である。
ア. 多世代共生の住宅の保障
 (1)多様な世代や所得層が共に住める住宅を保障し、 供給する。
 (2)低所得者層、 独り住まいの高齢者の住宅保障を図る。
 (3)ライフステージに合わせ、 子育て世代、 高齢者などが利用しやすい住み替えシステムを確保する。
イ. 市民のニーズに対応した住まいの支援
 (1)地域におけるNPOなど市民の協働による高齢者、 障がい者、 ホームレスなどを対象とするグループホーム、 グループリビングの供給を支援する。
 (2)木造密集地域のコミュニティ機能を活かした建て替えを支援する。
 (3)最低居住水準以下の住宅を解消し、 すべての住宅の耐震化を推進する。

II. 東京の状況と課題

  「2020年の将来構想」の「政策の課題」に関わるデータの解説
   
   IIのデータと解説は冊子に掲載。お買い求めはこちらから


   

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